ユーザーのニーズや流行に柔軟に対応できる運用型広告は、広告市場において右肩上がりで需要が増えています。しかし、種類が豊富で専門用語も多いことから、運用型広告の導入に踏み出せない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、運用型広告の基本的な知識と活用方法について解説していきます
運用型広告とは?
まずは、運用型広告を導入する上で、基本となる概要を理解する必要があります。
運用型広告の特徴と仕組み
運用型広告はその名の通り、ユーザーの反応などを確認して「リアルタイムで変更や改善しながら運用していく広告」になります。
掲載枠が固定されていないので、広告の予算や掲載期間、配信内容やターゲットなどを自由にコントロールできます。
広告配信のプラットフォームがオークション形式なので、1つの広告枠に対して他の広告主と競合しながら配信する仕組みになっています。
また、入札額や広告のクオリティなどによって掲載順位や場所が決定するので、成果は運用者の実力に左右されるという特徴があります。
運用型広告のメリット
最大のメリットは、予算や配信方法などを変更して「広告を細かくカスタマイズできる」という点です。
広告をカスタマイズすることで、ユーザーの属性や地域などで配信するターゲットを細かく絞れます。
ユーザーの反応もリアルタイムで計測できるので、「効果があれば追加」「効果がなければ停止」などの対応を迅速に行うことができます。
また、課金方法も「1クリックで課金」「表示回数によって課金」などの豊富な手段から選べるので、社内の広告予算を調整しやすい点も大きなメリットです。
さらに、運用型広告は数百円単位で出稿が可能なので、個人でも低予算で広告を掲載できます。
純広告との違い
運用型広告と比較されることが多い「純広告」は、メディアなどの特定の広告枠を一定期間購入して出稿します。
広告枠を買い取るので一定の広告表示回数は保証されていますが、基本的には掲載期間が終了するまでは見守ることしかできません。
それに対して運用型広告は常に改善や調整を繰り返せるので、純広告よりも柔軟性のある広告形態になります。もちろんサービスの種類や媒体によって効果的な広告は違うため、自社のサービスがどちらの方が効果が出るか吟味したうえで出稿しましょう。
運用型広告の種類
運用型広告は、配信方法の違いなどで主に以下の5種類に分けることができます。
リスティング広告(検索連動型広告)
リスティング広告は、検索サイトの「Yahoo!」や「Google」などで検索結果の上部に広告を表示させる配信方法になります。
入札する金額や広告の内容によってはすぐに広告を配信できるので、SEO対策を駆使して検索上位を目指すよりも即効性があります。
また、広告を配信する場所が「ユーザーが自発的に検索したキーワード」の検索結果なので、そのジャンルに興味があるユーザーに売り込みたい商品やサービスに有効です。
しかし、リスティング広告は検索されたキーワードに対して広告を出稿するので、キーワード自体の検索件数が減ってしまうと表示回数も減るというデメリットがあります。
ディスプレイネットワーク広告(コンテンツ連動型広告)
ディスプレイネットワーク広告とは、広告を出稿するWeb媒体を複数取りまとめてネットワーク化して配信する方法です。
ディスプレイネットワーク広告を提供している企業が、最適な出稿先を選定して配信します。
そのため、広告を配信する場所を広告主が選ぶ必要がないのが特徴です。
潜在的ニーズにアプローチしやすく幅広いユーザーの目に触れるので、まだ認知を獲得していない低関心層の商品やサービスに有効になります。
また、広告主が配信先を選ばないので「配信先の媒体」「媒体ごとの表示回数や広告効果」を正確に把握できないというデメリットもあります。
SNS広告(動画広告)
SNS広告はソーシャルメディア内の広告枠に配信する方法で、近年はYouTubeなどの動画広告が主流になっています。
また、TwitterやInstagramなどの利用者が多いSNSを利用することで、「いいね」といったアクションや「リツイート」などの拡散行動を得られやすいのが特徴です。
YouTube以外は基本的にタイムライン上に広告が表示されるので、ユーザーが広告を意識しすぎず、コンテンツを楽しむ過程で自然に訴求できます。
SNSはアクティブユーザーが多いので、ユーザーの反応を確認したい商品やサービスに有効です。
しかし、広告主側でのコントロールが難しいというデメリットもあります。
広告がユーザーによって「広告主の意図しない形」で拡散されてしまい、企業にとって悪影響となる可能性があるので注意が必要です。
DSP広告
DSP広告は、複数の広告媒体を集めたアドネットワークを横断して広告を配信する方法になります。
「Demand Side Platform」というサービスを利用するので、広告主は訴求したいターゲットユーザーに対してリアルタイムでの広告枠の入札が可能です。
具体的には「DSPを通じて広告主に入札要請が行われ、掲載側はDSPで最も高値を付けた広告主の広告を瞬時に掲載する」という流れになります。
DSP広告はターゲットに対して素早く正確に訴求できるので、特定のユーザー層に人気のある商品やサービスに有効です。
最大のデメリットとしては、DSPを利用するための料金を支払う必要があるということです。
広告料とは別の費用が発生するので、予算が少ない場合は積極的に利用できません。
リターゲティング広告(リマケ広告)
リターゲティング広告とは、ユーザーのcookie情報を取得し、過去のサイト閲覧履歴などから広告を最適化して配信する方法になります。
基本的に広告は、1度の訴求では成果が得られないケースがほとんどです。そこで、ユーザーのcookie情報をもとに別サイトを見ている時にも同じ広告を表示していきます。
同じユーザーに何度も訴求できるので、1度見た広告を思い出すことで購入などの成果に繋がりやすいのが特徴です。
関心があり情報収集もしているユーザーに繰り返し訴求できるので、実際に購入してもらいたい商品や試してほしいサービスに有効になります。
しかし、リターゲティング広告は「完全に新規の顧客を獲得する」という目的には向いていません。
1度でも広告を見たりサイトに訪れている「見込み客」に対して配信する広告なので、新規顧客を獲得したい場合は純広告やディスプレイネットワーク広告がおすすめです。
運用型広告の課金方式
運用型広告には、主に7種類の課金方式があります。
それぞれの特徴を把握することで、予算やターゲットに最適な課金方式を選択できるようになります。
クリック課金方式(CPC型)
クリック課金方式は、ユーザーが「広告をクリックするタイミング」で広告料が発生します。
広告がユーザーのデバイス画面に表示されていても、クリックされない限りは広告料が発生することはありません。
クリック課金方式は費用対効果が明確で、広告をクリックしたニーズのあるユーザーにのみ訴求できます。
しかし、誤クリックが多い媒体で配信されたり広告主の競合が多くなったりした場合は、無駄な費用がかかってしまう可能性があります。
インプレッション課金方式(CPM型)
インプレッション課金方式は、広告が「デバイス画面に表示されたタイミング」で広告料が発生します。
基本的には、表示回数が1,000回になるごとに課金されていく仕組みです。
インプレッション課金方式は表示回数で料金が決まるので、クリック課金方式よりも広告料の変動が少なく、予算を組みやすいのが特徴です。
一方で、クリックなどの具体的なユーザーアクションが把握できないというデメリットもあります。
エンゲージメント課金方式(CPE型)
エンゲージメント課金方式は、広告に対して「ユーザーが行動を起こしたタイミング」で料金が発生し、主にSNS広告で採用されています。
クリック課金方式に似ていますが、行動とはSNSの「いいね」や「リツイート」といった拡散、コメントや画像クリックなど多岐に渡ります。
エンゲージメント課金方式はユーザーの行動を指標としているので、広告に対する反応を把握することができます。
成果報酬課金方式(PPA型)
成果報酬課金方式は、広告を配信するときに設定する「目標に達成したタイミング」で料金が発生します。
この目標には、商品の購入やサービスの利用開始、会員登録や資料請求などを設定します。
成果報酬課金方式は他よりも広告料が高く設定されていますが、購入などの成果に直接投資できるので、運用次第では最も費用対効果が高い課金方式です。
小見出し:掲載期間保証型課金方式(CPD型)
掲載期間保証型課金方式は、あらかじめ設定した「広告の掲載期間」に応じて料金が発生します。
広告を掲載する場所と期間が明確に決まっているので広告費を把握しやすく、予算を組みやすいのが最大のメリットになります。
しかし、配信後は基本的に期間終了まで掲載しなければならないので、事前にターゲットに適切に訴求できる媒体なのかを吟味する必要があります。
視聴課金方式(CPV型)
視聴課金方式は、配信する動画広告を「ユーザーが一定時間視聴したタイミング」で料金が発生します。
SNS広告における主流の課金方式で、広告の内容を認識してもらいやすいタイミングで課金されるので、単純な表示だけよりも費用対効果が高いです。
広告を動画で制作する必要があるので、制作費や時間がかかるというデメリットもあります。
配信数型課金方式
配信数型課金方式は、あらかじめ設定した「広告を配信する媒体数」によって料金が発生します。
主にメルマガやLINE@で採用されるので、その媒体が持っているリストにターゲットが近ければ高い効果が期待できます。
ただし、配信してもユーザーが広告をクリックしないケースも多いので慎重に配信先を選ぶ必要があります。
中見出し:運用型広告の活用方法
運用型広告を適切に活用していくためには、以下の3点を意識する必要があります。
- モニタリング
- 分析
- 改善
広告はどれだけ準備をしても、想定通りの効果が得られるとは限りません。
モニタリングでは、必ず「日次」「週次」「月次」など複数のレポートを確認します。
次に、想定した成果ではない場合はもちろん、予想以上に成果が得られた場合も「なぜそうなったのか」を分析します。
最後に分析結果から課題と要因を把握し、それらを改善する施策を立てることが大切になります。
導入する場合の注意点
運用型広告は自由にカスタマイズできるからこそ、配信する媒体や時期、ターゲットの選定など慎重に検討するべき項目が非常に多いです。
そのため、運用型広告を最適化するためには一定の経験や知識が必要になります。
また、導入する場合は必ずKGI(重要業績評価指標)やターゲット設定、広告予算などを明確に決定しておきましょう。
計画を立てずに運用型広告を導入してしまうと、成果が得られないまま広告予算を大幅に消費してしまうので注意してください。
運用型広告のデータを効率的に分析する方法
運用型広告を活用するには、データをモニタリングして分析する必要があるとお伝えしました。
そこで、データを効率的に分析する方法を2つ紹介します。
レポートを作成する
データを効率的に分析するために、あらかじめ目的に沿って必要なレポートを準備しておきましょう。
レポートに最低限必要なデータは、以下の通りになります。
- 日別消化金額
- クリック数
- クリック単価
- CV
- 平均掲載順位
- 媒体毎の消化金額
この他にも広告の種類や課金方式、ターゲットなどに合わせて必要なデータを収集し、レポートにまとめてください。
サポートツールを利用する
レポートを作成することでデータを効率的に分析できますが、データを毎日収集してレポートを作成するのは非常に大変な作業です。
そこで、運用型広告のデータ集計や分析に特化したサポートツールを利用しましょう。
主なサポートツールは以下の通りです。
- glu(グルー)
- ATOM(アトム)
- アドレポ
- Lisket(リスケット)
- LisPO(リスポ)
サポートツールを利用することで、業務時間を大幅に削減できます。
また、運用型広告のレポート作成には正確な情報収集が求められますが、手動で行うと入力ミスなどが起こってしまう可能性があります。
こういったエラーを事前に防ぐことも、効率的に分析をする上で大切な要素になります。
レポートを作成してデータを集めた後は、さらに精度の高い広告運用に活用してください。
まとめ
運用型広告には、広告の予算や掲載期間、配信内容やターゲットなどを自由にカスタマイズできるという大きなメリットがあります。また、はじめて運用型広告を出稿する際は1回の出稿で完成形を求めるのではなく、ABテストを繰り返し、最も効果の出るレイアウトやターゲティング、文章を模索することをおすすめします。
ぜひ運用型広告を導入して、費用対効果の高い最適な広告を打ち出しましょう。