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カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いやオススメ本を紹介

カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いやオススメ本を紹介

2019.11.21
この記事の著者
橋本 直矢
橋本 直矢
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かつては、企業が利益を伸ばすには「より多くの商品を売る」「たくさんの顧客から契約を獲得する」といった考え方が当たり前だったかもしれません。しかし、現代では必ずしも商品を売ることと企業の成長は同義ではありません。顧客に成功体験を与え、企業への信頼を高めてもらわなければ、結局いつかは離れていってしまい、自社の成長が止まってしまう可能性があります。こうした時代では、「カスタマーサクセス」という概念が注目されるようになってきました。この記事では、そんなカスタマーサクセスについての基本的な情報から企業として押さえておきたい原則までご紹介します。

カスタマーサクセス(CS)が今注目されているのはなぜ?

近年、ビジネスにおいて注目されている「カスタマーサクセス」とは、端的にいえば「顧客を成功に導くこと」です。略して「CS」とも呼ばれています。ゼロ年代に入り、インターネットの普及率が拡大するにつれてカスタマーサクセスを取り入れ始めた企業が増えてきたとみられます。

カスタマーサクセスを語るときのサービス例として、音楽や映像の配信サイトが挙げられます。これまでの配信サイトでは、「利用数」に応じて料金を支払うシステムが普通でした。「1曲100円」などと決められたうえで、ダウンロードしただけのお金がかかる着メロサイトなどは、典型的なケースといえるでしょう。しかし、現在の配信サイトでは、利用数ではなく「利用期間」に合わせて料金を支払うシステムが主流になりつつあります。顧客は「1カ月980円」といったような契約を行い、期間内で好きなだけ配信サイトから音楽や映像を楽しむようになりました。こうした契約形態を「サブスクリプションサービス」と呼びます。Webに限らず、自動車や不動産のレンタルもサブスクリプションサービスの一環です。

サブスクリプションサービスの台頭により、カスタマーサクセスの注目度は高まってきました。なぜなら、サブスクリプションサービスでは、顧客満足度へ特に配慮する必要があるからです。

利用数重視であれば、サービスの価値は商品にあります。優れた商品を数多く紹介すれば、顧客の心を動かせて売上につながりました。商品の中身や価格が訴求ポイントだといえたのです。一方、サブスクリプションサービスでは、継続的に利用してもらうことが重要です。しかし、使いたい放題、買いたい放題の世界では、単に商品をたくさん並べても、欲しい商品が手に入った時点で顧客は離れていくでしょう。そんな中、顧客にサービスを利用し続けてもらうためには、カスタマーサクセスを大切にして顧客満足度を上げる必要性があるということです。いわば、サービスで提供されるものよりも、サービスそのものの価値が問われる時代が到来したといえます。

IT業界の進歩もカスタマーサクセスと密接に関わっているといえます。技術が革新され、Webを通じて利用できるサービスは増えてきています。しかし、技術が複雑になりすぎて、サイトの操作がわからなくなったり、支払い方法などの手順が見えづらくなったりするケースも出てきました。そんなとき、顧客の不満を放置していては、簡単に離脱を招いてしまいます。そこで、カスタマーサクセスという考え方が出てきます。顧客目線でサービスの不備を解消し、リピーターを獲得するための工夫を徹底します。顧客が自ら質問をして来る前に、そもそもの使い勝手やサイトの見やすさを意識し、クレームを生まないための対策を練るのです。

カスタマーサクセスでは、「顧客は何かを成し遂げるためにサービスを利用している」という前提に立ちます。そして、企業に求められているのは、顧客が成功に向かうまでの道筋をサポートすることです。何を持って顧客の成功となるのか、そこで企業が何を手伝えるのかをしっかり把握しましょう。そうすれば、カスタマーサクセスを実現するうえでの具体的な計画が見えてくるでしょう。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスと似た言葉として「カスタマーサポート」が挙げられます。どちらも、企業が顧客の満足度を上げるために必要な考え方ではあります。しかし、細かく考えると、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは異なるものです。

カスタマーサポートとは、「顧客の不安を解消するために行われる活動」のことです。また、こうした活動を担当している部門を指すケースもあります。カスタマーサポートの代表例としては、コールセンターなどのインバウンド業務が挙げられるでしょう。コールセンターには顧客からの疑問やクレームが寄せられてきます。こういったものは、顧客が安心して企業の商品・サービスを利用するうえで弊害となる要因です。そこで、コールセンターは顧客の質問に答え、可能な範囲で要望に応じ、不安を解消します。

一方、カスタマーサクセスとは不安解消ではなく、顧客の成功体験を導くために行われる活動です。カスタマーサポートが「待ちの姿勢」であるならば、カスタマーサクセスは「攻めの姿勢」だといえるでしょう。カスタマーサポートは基本的に、顧客が問題点を見つけてからの活動となります。顧客から連絡があるまでスタッフもシステムも待機している状態です。確かに、カスタマーサポートのおかげで企業への信頼を強め、リピーターになってくれる顧客もいるでしょう。しかし、カスタマーサポートは問題を未然に防ぐ役割は担っていません。カスタマーサポートは顧客が商品・サービスに問題を感じることを前提として設置されています。場合によっては、カスタマーサポートに連絡が入った時点で、問題は取り返しのつかないレベルにまで悪化している可能性もゼロではないのです。

カスタマーサポートに対して、カスタマーサクセスはそもそも問題を起こさないという目的を抱いています。そして、問題の原因を根絶するには顧客の「成功」を把握しておくことが重要です。顧客の問題点に合わせて仕事をするのではなく、顧客に成功体験を提供して満足度を高めます。たとえば、自動車会社の顧客が「車の維持費がかかりすぎる」と感じクレームを入れることがあるかもしれません。しかし、そもそもの価格設定を見直したり、顧客が得だと思える特典を設けたりすれば、クレームの数を減らせる可能性があるということです。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いは「顧客とまっすぐ向き合う覚悟」とも形容できるかもしれません。カスタマーサポートが問い合わせの処理に重きを置いているのは、自社の利益が考え方の中心にあるからです。そして、顧客に自社のやり方を納得してもらえるよう、サービスを運用しています。逆に、カスタマーサクセスは顧客の利益を優先的に考えています。顧客が企業を通して利益を得てくれたら、結果的に企業側の利益も伸びていくでしょう。そのため、カスタマーサクセスは顧客の需要に企業が合わせ、的確に提案していく姿勢を本質としています。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスには「企業が顧客と接点を持ち、理解を得ようと働きかける活動」という共通点があることは事実です。ただし、理解を得るまでの過程には違いがあるということです。

カスタマーサクセスを企業が導入する効果

企業がカスタマーサクセスを導入するとさまざまな効果を期待できます。中でも、「解約の削減」は非常に大きなメリットだといえるでしょう。特に、サブスクリプションサービスにおいては、会員の解約をいかに減らすかが生命線だといえます。いくらサービスを宣伝して新規顧客を獲得したとしても、解約数が増えれば利益はマイナスになりかねないからです。

会員の解約があったとき、重要視せず見逃してしまうこともあるでしょう。確かに大型サービスであれば、わずかな解約があったところですぐに打撃は受けません。しかし、長期的に見たとき、解約数はどんどん増加していく可能性があります。一度、サービスを解約した会員が再び戻ってくることはあまり期待できません。他社のより優れたサービスを見つけて、完全に乗り換えてしまうことが考えられます。企業が中長期的に経営戦略を立てるなら、解約数は無視できません。

もしも企業が会員の解約を止めることができたなら、「追加受注」をしてもらえる可能性がふくらみます。追加受注とは、あるサービスを利用している会員が当初の契約以上のオプションを利用してくれることです。たとえば、ある人が動画視聴の月額契約を結んでいたとします。その人は下位のプランで契約していて、料金内で見られる動画に制限があります。ここで、「こんなサービスと契約するんじゃなかった」と思わせてしまうと、解約となってしまうでしょう。逆に、「良いサービスなのでもっと動画を見たい」と思ってくれたなら、さらに上位プランへと切り替えてくれる可能性があります。これが、追加受注です。

サブスクリプションサービスでは、どうやって会員に多くの追加受注してもらえるかが鍵となります。そのために、企業としてはカスタマーサクセスの理念にのっとり、会員にサービスの魅力を深く伝えることが大切です。会員がサービス内でどんなことができて、どんな利益を得られるのかをレクチャーしていきます。

会員に上位プランを提案することを「アップセル」、別の商品を追加で薦めることを「クロスセル」といいます。アップセルやクロスセルを成功させるにあたり、カスタマーサクセスは大事な役割を担うでしょう。

カスタマーサクセスを考えるとき押さえておきたい5つの基本原則

企業がカスタマーサクセスを考えるときには、押さえておきたい基本原則があります。以下に、5つ紹介します。

第1に「顧客の選定」です。カスタマーサクセスでは顧客のことを考えるのが重要ではありますが、その先には上述のように、解約を抑えて、追加受注を得るといった企業としての目的も内在します。そしてその達成のためには、顧客の選定が重要になります。企業のターゲット層から外れた顧客と契約しても、解約が起こりやすくなるだけです。初めから明確なターゲットを絞り込み、その層を獲得する作業に力を割きましょう。

第2に「顧客は成功を求めていると自覚」することです。顧客がサービスを利用するのは成功に近づく手段としてであり、企業は顧客がどんな成功を求めているのかを知っておく必要があります。顧客がお金と時間をかけてまで手に入れようとしているのは、小規模の成功ではないかもしれません。他社では得られない大成功が得られるとわかったなら、顧客は継続的に企業と付き合ってくれることも期待できます。

第3に「カスタマーヘルス」です。顧客がサービスに満足している状態は、「カスタマーがヘルシーな状態である」といえます。カスタマーサクセスにおいては顧客がヘルシーなまま、サービスを利用できるよう工夫しなくてはいけません。例として、「解約の気配がある」「サービスを深く利用している」などの項目を徹底的に分析して数値化した「ヘルススコア」を用いる方法があります。スコアが低下した場合、どの項目で支障が起きているのかをすぐ確認して、対応します。

第4に「指標をはっきりと持つこと」です。カスタマーサクセスの状況を判断するとき、担当者が主観的に思い込みをするのは得策といえません。顧客による上位プランへの切り替えや、オプションの追加といったような、客観的な指標が重要となります。

そして、第5に「社内全体での共有」です。カスタマーサクセスは、担当者や担当部署だけが取り組むような状態にするのではなく、全社員が重要性を理解し、意識するようにすることが大切です。

カスタマーサクセスの理解を深めるための参考書籍4冊

ここからは、カスタマーサクセスについて勉強するうえで役立つ書籍を紹介していきます。興味を持ったら、チェックしてみてください。

まず、代表的な書籍として『カスタマーサクセス~サブスクリプションの時代に求められる『顧客の成功』10の原則~』が挙げられます。”青本”と呼ばれ、多くのカスタマーサクセスの実務担当者に親しまれています。本書では、サブスクリプションサービス隆盛の時代でカスタマーサクセスが成すべきことを明確に伝えているのが特徴です。具体策が「10の原則」という形で説明されていくので、ビジネス書を読みなれていない人でも要点をつかみやすいでしょう。

次に『サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方』は経営者やマーケティング担当者に新しい価値観を教えてくれる一冊です。本書は現代を「商品が売れない時代」と呼びます。サブスクリプションサービスの重要度が高まっている中、どのように思考を変えるべきなのかの導きを与えてくれます。特に、カスタマーサクセスの鍵である「顧客目線」については細かく解説されており、目から鱗が落ちるかもしれません。

実践的な内容が書かれている『THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』もおすすめです。本書は、カスタマーサクセスなど現代的なマーケティング理論を、現場に活かす方法について解説しています。

そして、顧客との関わり方を学ぶには『「売る技術」を超える「顧客ケア」の方法 売っても売れない時代の新・マーケティング戦略』を読んでみましょう。本書はそのタイトルが表すように、顧客のケア方法について書かれた本です。カスタマーサクセスでは、顧客とのコミュニケーションが非常に重要です。しかしながら、露骨な商品の宣伝ばかりしていたら逆に顧客の心は離れていってしまうかもしれません。商品を販売するための営業を超え、サービスを使い続けてもらうための営業を知りたい人に、本書はわかりやすく語りかけてきてくれます。

サブスクリプションサービスが主流になった時代では、アップセルとクロスセルの双方で利益を出すための戦略が必要とされています。そこで、カスタマーサクセスの重要性が高まってきました。カスタマーサクセスの本質は顧客の成功を知り、そこへ導くことにあります。これからは、企業が一方的に売りたい商品を訴求するだけではなく、顧客の本質的な需要を探り、長期的に顧客が成功体験を得られる仕組みを設けることが重要です。

動画でも解説していますので、あわせて参考にしてください。

著者プロフィール
橋本 直矢
橋本 直矢

メディアディレクター/SEOコンサルタント 雑誌広告、ECなど紙媒体とデジタル双方でリッチコンテンツの制作に10年以上携わりました。出版社の紙媒体からデジタル媒体への移行や、採用系メディア、医療、IT、金融、投資など幅広いメディアのディレクションを担当しています。

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